NEW!2025/04/01
カリッ、と小気味よい音が響いた。
箸を入れた瞬間、揚げたての衣が砕け、なめらかな鶏肉が顔をのぞかせる。
黄金色に輝く表面には、熱をまとった甘酸っぱいタレがたっぷりと染み込み、刻まれた長ねぎと生姜が香りを立てている。
ひとくち。
じゅわっと肉汁があふれ出し、揚げ油の香ばしさとタレの甘酸っぱさが舌の上で溶け合った。
酸味が食欲を刺激し、甘みがそれを優しく包み込む。噛みしめるたびに、外はカリカリ、中はしっとりとした絶妙な食感が楽しめる。
皿の上には、まだ幾つかの切れ端が残っている。
次のひと切れを口に運ぶ手が、自然と動いてしまう。
――もう一口、あと少しだけ。
だが、その「あと少し」は、いつまでも続く。
油淋鶏。その名は、ただの料理ではない。ひとたび口にすれば、もう戻れない。カリッとした一口の先にあるのは、幸福という名の罠なのだから。